保船管理グループ概要
船主殿からお預かりした大切な船舶にて、乗組員が本船上で行うさまざまな保守整備作業を統括管理するのが保船管理グループの業務です。また、本船機器類の故障や重大事故などの緊急時、乗組員と一体となり対応を行うことも仕事の一つです。
そして年次検査や定期検査を計画・実行し、また定期的な入渠工事の計画・立案・予算立て・工事の立ち合いを実施するのも大事な保船管理グループの業務です。
当グループは、グループ長1名とSI(Superintendent = 監督)5名(見習い含む)、また事務員2名で構成されており、2024年4月 現在、General Cargo 10隻 、Bulk Carrier 4隻、特殊冷凍船1隻、計15隻の船舶管理を行っています。
General CargoやBulk Carrierの他に、コンテナ船、冷凍船、セメント船~Livestock Carrierなどの船の管理経験があり、創業から約35隻の外航船の管理を行ってきました。
売買船時の手続きや立ち合い業務、また新造船の建造監督業務の経験もあります。新造船の監督業務では、仕様にあわせた建造状況の監督はもちろんのこと、船主様の特別要求への対応、または管理会社として培ったノウハウを新造船へ反映するなどのご提案やサポートもしています。
担当船制
当社では一つの船を一人のSIが責任を持って担当する、担当船制を取っています。具体的には各SIは数隻ずつ担当船を持っており保船管理グループ長統括の下、下記のような業務を一人で行います。
- 訪船活動による現状確認
- 機器故障時のトラブル対応
- 予備品/船用品/LOの見積り取得、査定、注文、積込み手配
- 管理経費の予算実績管理
- ドック工事立案及び現場立ち合い
- 証書管理、検査対応(計画、申請、実施)
これらの業務を一人で担当することにより、機器や船体の状況、乗組員の習熟度合いなどを把握し、本船の状態に沿った予算管理を行うことができ、より本船の状態に合わせた船舶管理を実現しています。
本船への訪船を積極的に行うことで、保守整備に関する問題点や改善点、有効なアイデアなどを乗組員と意見交換・打ち合わせをし、作業に活かしています。また作業時は乗組員と協力しあう事で乗組員との距離を縮め、船側から会社へどんな些細な事も報告しやすい雰囲気作りを心掛けています。
社内で毎月行う部内会議では、各船のトラブルについて各SIで共有し、事故防止対策を計画・実施する事により、同様のトラブル発生防止に役立てています。
修繕ドック業務について
日本をはじめ、中国、タイ、シンガポール、欧州(スペイン・ポルトガル・ギリシャ)、南米(チリ)の修繕ドックでの経験があります。またタイのドックには毎年継続的に入渠しています。
中国のドックでは、長年付き合いのある現地のサポート会社と連携し、フリー地からの最適なドック地の選定及び徹底した見積りの比較を行い、SI立ち合いのもとスムースなドック選定を行います。
ドックでの監督業務
ドックでは関係者と毎日ミーティングを行い、作業工程を把握し、工期の遅れや追加工事の有無を確認しています。
当社では基本的に監督一名でドックの立ち合い業務を行います。船機長には、監督の補佐的な役割を与えることで乗組員をコントロールし、これにより乗組員も責任感を持ってドック工事に取り組みます。
ドック期間中は、工事日報により進捗状況を船主様に報告します。追加工事等あれば、実施可否をただちに確認し、工期短縮に努めます。
完工後のドック工事報告書・費用集計は速やかに作成し、船主様へ報告します。
船舶管理手法
ハッチカバーの超音波計測について
当社では貨物の水漏れ事故防止のために、ハッチカバー用超音波計測器を一台保有し、SI訪船時に半年に一度の頻度で、ハッチカバーの超音波計測を行っています。
ホーステストやチョークテストの結果に問題がない場合でも、状況によっては水漏れを起こしてしまうことがあり、目では見えない水密状態の確認のためには、超音波検査の実施が有効であると考えています。
その結果、これまで確認できなかったハッチカバーパッキンの状態をピンポイントで把握することができ、無駄のない適切なパッキン整備を行っています。また乗組員と作業を行うことにより、乗組員のハッチカバー保守の意識向上にもつながっています。
MARPOLの規則順守
当社ではMARPOL規則遵守にも取り組んでおり、特に、OWS(油水分離機)、OCM(15ppm警報装置)の使用方法についての乗組員の習熟訓練をSI訪船業務の際に併せて行っています。
以前は、乗組員はOCMの作動テストのみの習熟が必要でした。しかし近年ではUSCG検査やPSC検査において、そのスキルだけでは乗組員の習熟度不足とされて指摘を受ける可能性があります。
その原因は機器の重要性の認識不足にあると分析し、機器の取扱説明を含む、当社独自の教育資料を作成し習熟訓練を行っています。
<教育資料内容>
- 運転ログの確認やOIL RECORD BOOKとの整合性の確認手順
- OCM時計表示設定の変更操作
- OCM内部バッテリーの交換方法
- OCM表示内容の理解
- 停泊中の循環運転の実施による模擬運転訓練手順
これにより乗組員がUSCG/PSC検査に適切に対応することができ、OWS/OCMに関する指摘内容が激減し、不慮の油流出・油の違法排出を防いでいます。
発電機メーカーの運転解析システムの導入
取引先の発電機メーカー提供の遠隔運転解析システムを導入し、発電機の状態管理及び事故防止に取り組んでいます。
システム導入後はメーカー側担当者と定期的な報告会を開催し、結果、工場出荷時の運転データとの比較検証が容易になりました。さらに発電機の各温度や圧力の僅かな増減を分析し、事故の未然防止、運転性能の最適化を可能にしています。
人材育成
保船管理グループでは、若手の人材育成にも力を入れており、2023年に新たに3名を採用しました。現在では担当船を受け持ち、一人前のSIを目指し、日々業務に取り組んでおります。
主な育成プログラムは以下の通りです。
- 乗船研修(管理船への短期乗船も可能)
- 船内で実際に行われる保守整備作業を通じて、取扱説明書には載っていないような現場ならではのノウハウやテクニックを習得する。
- 他国籍の乗組員との共同生活により、自身の価値観や常識との違いを体験し、多様な感受性を養う
- 訪船やドック帯同
- 初期段階では上司に付き添い、上司の指示や指導を受ける。
- 次のステップでは上司監視のもと、自身で検査の立ち合いや修理作業を監督する
- 最終的には単独で訪船やドック監督業務を行えるようになる
- 各種セミナーや講習への積極的な参加
- メーカー様による研修等への積極的参加
このような人材育成により、昨今の船舶管理会社が抱える中堅世代の空洞化問題に対応しています。